第5章.中山間地域の活性化に向けた将来ビジョンづくり

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    JUGEMテーマ:地域/ローカル


     



    第5章.中山間地域の活性化に向けた将来ビジョンづくり

     

    (1)心の豊かさ・誇りの持てる地域を目指して

     


      近年、スローフードやスローライフ、エコライフといったことがクローズアップされてきています。これまでの利便性のみを追求するようなあわただしい生活スタイルを見直そうという動きです。つまり、時間のものさしを変えて生活を見直すことですが、それにとどまらず、人々の身心の健康を取り戻すこと、人々の暮らしの面から環境負荷を減らすことにもつながります。

     このような生活スタイルの見直しは、高度成長過程で見捨てられてきた伝統的な生活、伝統的な技術などを見直し再評価することにつながってきています。

     このことは、全国的な交通体系の整備と開発の進展からは取り残された反面、豊かな自然環境や伝統的な生活・文化などを温存することができた中山間地域にとって、大きなチャンスが到来していることを意味しています。

    また、地域住民が普段の生活や営みの中に引き継いできたものを見直し、その現代的な意義を再評価することを通じて、技能・技術、祭りなど地域の生活文化に誇りを持つことが大切であることを示しています。


    (2)中山間地域・集落の活性化とはどんな姿か

     

    〜そこに住んでいる人々が暮らしを楽しみ生き生きとしている〜

     

    このように中山間地域(市町村または集落)の現状や発展要素を考えると、地域の活性化の基本は、地域での普段のくらしが豊かであり、そこに住んでいる人々が生き生きしていることが、望ましい姿だと思います。

    別の言い方をすれば、この地域の人・事が楽しい、この地域で作ったものを食べる・使うことが楽しい、この地域の生活を楽しむことができるといったように、地域に住む人が日々の暮らしを楽しみ、豊かさの価値観を享受できる状態を維持していくことだと考えます。

     このことは、地域に住む人の心の中のことであり、なかなか目に見えることではありません。住んでいる人が少なくなったとか(過疎化)、平均年齢が高くなったとか(高齢化)、そのほか所得水準や製造品出荷額など、客観的数字では測ることができない心の問題です。

    そのため、地域に住む人にとっても、当たり前すぎて気づかない面もあります。ただ、重要なのは、その当たり前のことの中に、人々の活力がみなぎり、笑顔がみられ、自分たちの生活を楽しむために、住み続けている意味や明るい顔の理由をつかみ、それを伸ばす工夫をすることができる、そのことが結果として、「地域の活性化」であると考えます。

     


    (3)地域の個性を活かした将来ビジョンづくり(事例)

     

    ◇事例1:先人はなぜここに家を建てたのか、どうやって集落の風景が作られたのか

    (平成18年度:三重県亀山市白川地区)

     

    三重県亀山市白川地区、ここは田園風景に古い民家が山のすそ野に続いていていい風景でした。

    私たちは、家や住まいを中心に集落全体の風景調べる前に研修生に課題(テーマ)を出しました。それは、「先人はなぜここに家を建てたのか、どうやって集落の風景が作られたのか」ということです。少し難しいとは思いますが、昔の人は様々な理由や条件から家を建てる土地を選んでいます。

    また、何気ない風景にも意味があり、その土地の条件を理解し、最大限に土地の条件やその土地にあるものを活かしながら生活を営んできた証として風景があります。

    そのことに気がつき、その意味を解明しないと、これからこの地域をどうつくっていくか、その方向性が大きく違ってくる危険性があるからです。

    調査は集落全体を歩きながら住んでいる人に、今の暮らしや昔の話を聞くことで全体的なことを把握し、最終的には古くからある民家一軒を徹底的に調べることで、課題に対する答えを探しました。

     

    白川地区の家は、みなさんとても大きく立派で、100%自然素材でできていました。米とお茶栽培でどうしてみなさんこんな立派な家を建てられたのか。古い民家に住む一人のお年寄りの話を聞くことで様々なことが分かりました。



     

    〇自給自足・協働の経済によって建てられた家

    家の柱の木、土壁用の赤土と稲ワラ・竹、瓦用のねんど土、石垣用の河原石・山石、すべてこの地域にあるもので、材料代はほとんど無料。人件費も80%(柱の組み立て、土壁の下塗り、瓦ならべ)は家族や親戚、近隣の人のボランティア(この地域では「であい」と言う)で、あと20%の仕上げ(瓦ふき、壁の仕上げ、板張り)のみを地元の大工や左官屋さんに頼んでいました。今建てるとすれば3000万円かかるのを昔の人は、地元にあるものを自分で取ってきて(自給自足)、みんなで協力すること(協働)で、2380万円もの経費を削減していました。自給自足・協働の考え方、仕組み、技術によって、たとえお金が少なくても家は建てられていたのです。

     

    最終的に研修生と亀山市白川地区を調べて分かったこと、それは、家造りは自給自足や協働の考え方や仕組みによって建てられたこと。また、地区の家並みや田園風景は、光・土・風・水を求めてこの地に家を構え、地域にあるものや土地の条件を最大限に生かしながら生きてきた人々の手によってつくられてきたものでした。

     


    〇光・土・風・水を求めて、ともに生きる亀山市白川地区

    (光)人々は小高い山の尾根や裾野に沿って日当たりの良い土地を撰んだ。

    (土)この土地にある土、岩、石、木材、人をじょうずに活かしながら家を建てた。

    (風)奥山の谷から吹き下る西風と裏山から吹き上がる北風から家を守るため、北側に防風林、西側に垣根を構えた。ただ、家正面の南側からの緩やかな風は板張りの土壁によって家の中にじょうずに取り込んだ。

    (水)奥山の水源地から水を引き、井戸を掘り、その水を家の水、田畑の水と上手に活かしながら暮らしを営んできた。推測するに、田んぼに蓄えられた水の地下浸透がなければ、家の井戸水は十分でなかったかもしれない。

     

     農山村の集落には、先人の住まい方に対する考え方や智恵が残っており、そこの集落にあるものの形や姿(風景)には、必ず意味や訳があります。その意味を分からずしての新たな開発や取り組みは、方向性を誤る危険性を持っています。

     地域づくりに関心のある人や行政関係者の方は、まずは自分の家や身近なコミュニティを徹底的に調べてみてはどうでしょうか。県外や海外の事例に学ぶより、より多くの学びに出会うと思います。

     


    ◇事例2:この地域はどんな地域かを表現する

    (平成15年度:旧十和村・奥大道地区)

     

    〇天空の里 十和村大道地区を訪れて

     平成15年9月27日・28日に十和村大道地区において、地元学の手法を用いて地区のあるもの探し・絵地図づくりが行われました。

     さて、大道地区のあるもの探しですが、私は外から見てこの地区の特徴や個性を大づかみに表現しようと試みました。大づかみといっても、これが難しく、地形や方角、山、風、光、植物、動物、家、人、暮らしなど様々な事に目を配りながら、この地区特有の個性を文章で表現しなければなりません。これまでの自分の先入観を捨て、目の前にあるもの意味を探りながら、この地区はどんな所かを表現しました。

     今回のあるもの探しで、大道地区には様々な食や文化、暮らしの知恵・技術があることがわかりました。また、標高1000メートルを超えるこの場所で生きてきた、または現在ここに生きる人々の力強さを感じました。この地区はどんな所か、一言でいえば「天空の里」と呼ぶにふさわしい所ではないかと思いました。

     

    〇奥大道とはどんな所か

    奥大道、ここはその昔、平家の落人が伊予方面から四国山脈を越え、源氏の追っ手から逃れてこの地に移り住んだといわれ、家宝の絹巻を干したといわれる場所、銅鏡の鏡など、平家一族のゆかりのある場所や宝が多数存在するところです。

    多くの家が南・西南の方角に、谷筋の川を登る風の道を避けるように据えており、それゆえ、台風の時は風が吹き込まず、逆に天気になると気持ちよく西風が家に吹き込んできます。

    水は谷から引き込み、貴重な水源を確保してきました。今でもその谷水を飲み、洗い場、田畑を通り、水を浄化させながら四万十の支流に戻しています。

    家の周囲は、滝山と言われ岩山が多く、土地はやせており、それゆえ赤松が多く自生しています。

    田畑は少ない平地、山の傾斜を最大限活用し、石垣を築きキビ・麦・芋など作物を作り時給自足の生活をしてきました。

    また、多くの人が山師として働き、近場での伐採作業、コウゾ・ミツマタの生産、黒炭を焼き収入源としてきました。

    道は険しく、昔は蟹のように横になって歩かなければならないほど、狭いものでした。買い物に行くにも、下の集落まで往復一日かかりました。塩や醤油・肥料など最低限生活に必要なものでも時には40キロほどの荷物を肩に担いで運びました。

    神々への信仰は厚く、山の神、祇園様、氏神様を奉り、ときに神楽太鼓を叩き、踊りを舞い、神への信仰とともに生活の楽しみをつくってきました。

    その昔、伊予を越えこの地に生活の場を求めてきた人々は、山を奉り、山に頼り、山のものを上手く使ってこれまで生活を営んできました。

    切り立った岩山の天辺に暮らす、平家伝説のある里は、まさに天空の里と呼ぶにふさわしいところです。 

     


    ◇事例3:黒潮町のものづくりの新たなアイデンティティづくり

     (平成22年度:黒潮町さしすせそ計画序文より)

     

    〇自分たちの中にどんな考え方があるのか。

     

    旧大方町と佐賀町とが合併してできた町「黒潮町」は、文字通り目の前に黒潮が流れる温暖な地域で、白い砂浜、美しい海が自慢な町です。

    大方地区ではその美しい砂浜を守るために砂浜を美術館に見立てた考え方で独自のまちづくりを長年展開してきました。また、海岸部の砂地を活かして古くからサトウキビづくりが盛んで、日本のサトウキビ栽培の北限地として、不純物を取り除いた上品な黒砂糖を今でも生産し続けています。

    一方、佐賀地区では近年、美しい海を活かした塩づくりが盛んで、太陽と風の力のみで時間をかけて結晶化させて作る天日塩の国内有数の産地となっています。

    まさに黒潮町は黒潮に育まれた黒砂糖と塩(天日塩)の町なのです。

     


    〇自分たちのものさしは「さしすせそ」

     

    基本・シンプル・素を大事にする町

     

    ここ黒潮町から発信する考え方としては、食の原点に立ち返り、町の誇りである豊かな自然からの恵「黒砂糖・天日塩」を基本に、それから派生した調味料を発展要素とした「さしすせそ」をコンセプトとし、

    ヾ靄棔閉缶N繊砲鯊臉擇砲垢襪海

    ⇒招廚癖を入れないこと

    A任里泙泙亮分や地域を楽しむこと

    これらの考え方を、この地域の全ての活動の指針(ものさし)として掲げることとします。そして、新たな物づくりや事おこしを通じて、最終目標である地域の美しい自然や一次産業を中心としたこの地の人の営みを守ります。

     


    ◇事例4:四万十市の商品開発に対する基本的な考え(私案)

    (平成23年度:四万十市西土佐商工会商品開発助言資料より)

     

    〇物から心(考え方)を売る時代へ

    食料が乏しかった時代から、今では物質的に豊かになり、世界中から食べ物が集まっており、店頭や売場では保存性や利便性を高めた物が多種多様に、しかも安く売られている。今の日本人は物質的には十分満足し、自分が今、何が欲しいかすら分からない人が多くなっている。

     しかし、その一方で、利便性や経費削減を追い求めたあまり、食品の偽造問題や中国ギョウザ事件、農薬・添加物の問題など、食の安全・安心の信頼は大きく揺らぎ、消費者は一体何を信じていいのか分からなくなってきている。

    そんな中、地方では利便性や経済性を追い求めた影響を受け、食の原点である第一次産業を中心とした食料生産が衰退の一途をたどっている。物質的に豊かになったがゆえの問題に対して、第一次産業をベースとした地域に住む私たちは、食を支える一次産業をそして地域そのものを守るために、一体どうすればいいか。

     

    その答えは私たち自身、地域に住む人の心の中にある。

     


     「何が欲しいか分からない」「何を信じていいのか分からない」人たちに対して、物ではなく、目に見えない「心(考え方・思い)」を売っていく。

    自分たちだけの考え方(ものさし)を持ち、相手のことを思いながら、また自分たちも楽しみながら物を作っていく。

    言わば、「自分たちの考え方」を共感という形で買ってもらうことが、これからの時代の商品開発・販売戦略において重要である。

     

    〇ものづくりを通じて生き方を示し、地域全体の価値を上げる

     ものづくり・商品を通じて、地域に住む人の生き方を示し、その結果、経済・第一次産業との結びつき・つながりを深めていく。

     最後の清流・四万十川のほとりで、ものづくり・考え方の手本を示し、ブランド(優良認知)として地域の価値を上げていく。そして、商品に関わる人だけでなく、この地に住む人の誇りにつなげていく。

     商品開発・販売活動は、「地域の価値を上げる」そのための運動でもある。


    次が最終章
    「第6章.中山間地域の未来をつくる新たな取り組みの提案」です。  http://blog.kurashinogakkou.co.jp/?eid=1283531








































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